1日の1/3は眠って過ごし,睡眠をしっかりとると元気に,睡眠不足では体調を崩しやすかったり,ボーッとしたりと,睡眠と生活は切っても切り離せないものです。
この睡眠ですが1日7時間取ると寿命が一番長いと言われており,睡眠時間が長すぎても短すぎても良くはないと言われています。人によって異なりますが,7時間前後は確保したいとことです。
そんな睡眠は私たちの体調だけではなく,ホルモンの分泌や筋肉とも関係してきます。とくにホルモンは睡眠中に分泌しやすく,睡眠不足に陥ると分泌量の低下が懸念されます。ホルモンの分泌が低下すると,トレーニングの質や筋肉量にまで影響するため,一夜漬けのような無茶はあまりおすすめできません。
「睡眠は無理してとれ」です。
今回は睡眠不足による筋力低下のリスクについてお話しします。
この記事について
・レム睡眠とノンレム睡眠
・睡眠時間と寿命
・睡眠中のホルモン分泌
・不足すると筋力低下につながる
レム睡眠とノンレム睡眠
ひとは「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」の2つを繰り返しながら眠っています。
レム睡眠
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Rapid Eye Movement(急速眼球運動)
この睡眠では,脳が活発に動いており,記憶の整理・定着が行われます。睡眠中に目がピクピクと動くことからレム(REM)睡眠と呼ばれています。
・眼球が動く
・体が休まっている状態
・夢を見ている
ノンレム睡眠
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non-Rapid Eye Movement(眼球運動のない)
脳は休息していると考えられており,脳や肉体の疲労回復にはとても重要です。眼球運動がないことからノンレム(non-REM)睡眠と呼ばれています。
ノンレム睡眠は眠りの深さにより,4つの睡眠段階があります。
・脳は眠っている状態
・身体は起きている
まず始めに深いノンレム睡眠が起こり,その後レム睡眠へと移行します。その繰り返しが90分周期で起こり,3〜5回繰り替えされます。
画像:厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイトより
睡眠を深くするには
最初の3時間半ほどが一番深い眠りで,ここがしっかりとれることで目覚めもすっきりとしたものになります。睡眠の後半にかけて徐々にレム睡眠の割合が多くなり,レム睡眠中に起きることができれば,目覚めが良いとされます。
眠りを深くしたい場合は,3時間はしっかりと取ることを意識しましょう。
睡眠時間と寿命
(前略)アメリカの研究で100万人以上を対象に,睡眠時間と寿命の関係が調べられた。(中略)最も死亡率が低いのは一日あたり6.5~7.5時間の睡眠をとっている人で,7.5時間以上の睡眠時間をとっている人はそれよりも死亡率が20%以上も高くなったのだ。(後略)
(前略)睡眠時間が6時間以下の人は7~8時間の人に比べて死亡率が2.4倍高くなる。(後略)
もちろん個人差はありますが,睡眠時間によって寿命への関与は決して否定はできません。上記のような8時間以上や6時間睡眠よりも,7時間が最適である報告がいくつもあるのです。
とくに6時間以下の睡眠で,うつ病や癌といった病気になりやすいことがわかっています。
日本は睡眠不足国
日本人は世界的に見ても睡眠時間が短いです。
2011年の経済協力開発機構の報告によると,日本はノルウェーに続いて2番目に睡眠時間が短いです。
南アフリカ:9時間12分
平均 :8時間15分
日本は寿命が長い国でもありますが,うつ病になり自殺率も高い国です。睡眠との関係は大きくありそうですね。
睡眠中のホルモン分泌
睡眠によって体を修復したり,脳が休むことにつながることは説明した通りです。では,睡眠不足に陥るとなぜ体が回復しないか,そのひとつにホルモンの分泌低下によるものがあります。
成長ホルモン
「成長ホルモン」は眠りから3時間以内に分泌されており,特に最初の90分間の深い眠り「ノンレム睡眠」の時にピークとなります。つまり,成長ホルモンをたっぷりと分泌させるには,少なくとも3時間以上は眠り,その間に深く眠れていることが必要です。
・成長ホルモンは,最初の3時間
【成長ホルモンと筋肥大の関係】必要なのか
成長ホルモンには,骨を成長させたり,タンパク質の合成,脂肪を代謝するといった作用があります。不規則な生活で分泌量が減ると,筋肥大を阻害するといった報告もあります。加齢にもよって徐々に減るため,年齢を重ねるほど意識して分泌を促進することが大切です。
ゴールデンタイムは本当?
「成長ホルモン」のほとんどは睡眠中に分泌されます。
かつては「夜22時から2時のゴールデンタイム成長ホルモンが多く分泌される」と紹介されてきましたが,それは誤りです。睡眠中であれば時間をずらしても,差は出ないことが明らかになっています。
しかし,いくらずらしても良いといっても,真っ昼間に寝るのはNG。体内には「体内時計」がありある程度はそれに従うようできています。できるだけ,夜に寝て朝起きるようにしましょう。
テストステロン
ある報告では睡眠7時間の人に1週間,睡眠時間を5時間にしてもらったところ,テストステロンの分泌量が10〜15%も減った報告があります。
テストステロンは男性ホルモンの代表。
このホルモンが減ることで,精神面では気力が減ったり気持ちが沈み込んだりします。
【テストステロンとは】筋トレや健康との関係性
テストステロンは男性ホルモンの代表格で,髭や男性らしい体をつくる,声変わりとった二次性徴に不可欠なホルモン。成人になってからも骨格形成やタンパク質の合成を促したりと人体には不可欠なホルモンです。女性も男性の5-10%程度分泌されています。
【テストステロンの減少=筋力低下】男性の更年期障害
女性だけではなく男性にも【更年期障害】があります。LOH症候群と言われており,加齢に伴う男性ホルモンの低下で筋肉量低下や気力が低下し,うつ症状を呈するなど様々な症状があります。運動不足も影響しており,中年の男性は注意が必要です。
不足すると筋力低下につながる
睡眠とホルモンの関係はかなり密なものです。そしてそこからわかるのが,ホルモン低下による筋力不足や筋力低下です。
成長ホルモンは分泌されると,IGF-1というタンパク質の合成分泌を促進する物質を刺激します。この物質が低下すると,せっかく筋トレで損傷した筋組織を修復する能力が低下します。眠っている間に筋肉が修復されますが,その睡眠がしっかり取れていないとホルモンも分泌されません。
またテストステロンも同様で,筋肉を作るためのタンパク質の合成を助ける働きがあります。睡眠時間が低下することで,テストステロンの分泌量も低下していることから,しっかりと睡眠を確保するのが良いでしょう。
筋トレの「質」も重要ですが,睡眠の「質」もしっかりと確保することが大切です。